あらすじ

性格は正反対だがどこかウマの合う高校2年生の内海想(池松壮亮)と瀬戸小吉(菅田将暉)は、放課後にいつも河原で話をしながら暇つぶしをしている。くだらない言葉遊びや、思いを寄せる女子へのメールの内容、時にはシリアスなことも語り合う。
そんな二人を見守る同級生の樫村一期(中条あやみ)に瀬戸は憧れているが、樫村は内海に好意を抱いており……。

Thank you as always.Please spend a good time in the movie.
Sponsored link1

感想&レビュー

最近は漫画原作の映画を批判する風潮がありますが、数年遅れています。たしかに昔は漫画のネームヴァリューに頼っただけの安易な映画ばかり作られ、邦画のレベルを下げる原因になっていましたが、漫画を映画にするノウハウを邦画界が学びはじめて状況は変わりました。『るろうに剣心』『バクマン』『アイアムアヒーロー』など、次々に興行と内容の両方で成功する作品が生まれ、漫画原作映画は邦画を支える柱になりつつあります。そして、『セトウツミ』もまた、そうした作品の1本に数えられる傑作です。

 

この作品は共通した登場人物のもと描かれる連作短編映画であり、各々のエピソードはほぼ1シチュエーションです。タランティーノ映画でお馴染みの本筋とは関係ない無駄話、面白くていつまでも見ていられる無駄話を、関西弁のリズムやテンポを借りて日本映画で表現したものと言えば分かりやすいでしょう。内容的にTVドラマにも合うでしょうが、こうした牧歌的な物語を映画館で見ることには独特のリッチさがあり、それは映画的体験と呼べるものです。

 

基本的に主人公2人が無駄話をするだけ。つまり成立させるには漫才のように息のあったやり取りが不可欠で、それが実現できなければ確実に映画は失敗に終わります。映画とは様々な要素が絡み合い内容が決まるものですが、この作品に関しては二人の会話のやりとりが絶対的に重要です。監督はその難しい挑戦に池松壮亮と菅田将暉という実力派若手俳優の2TOPを揃えました。原作の登場人物を演じられる年齢で、なおかつ難しい会話劇を成立させる高い演技力を備えているという条件で考えたときベストのキャスティングです。そして監督の目論見は成功を収めました。
 

まるでアドリブのような、日常風景を撮影したような生々しい会話は、それでもなお原作の会話をなぞっています。原作は漫画であり、シナリオのように文字としてセリフが描かれているので、話すテンポやリズム、間などは曖昧です。それらは監督の演出だけではなく、主演2人の力量によって実現したことは明らかです。そうして表現された劇中の会話は、今の日常で感じている、あるいは遠い昔に感じていた、人生の中でかけがえのない楽しかった時間です。本作はそれをスクリーンの中に映し出すことに成功していました。
 

いつまでも見ていられる、そしていつか見たことのある楽しい時間を描いた『セトウツミ』は必見です。